15相続手続きが「面倒だ」と感じる最初の壁!戸籍収集の複雑さと2024年制度改正の活用法
相続手続きが「面倒だ」と感じる最初の壁!
戸籍収集の複雑さと2024年制度改正の活用法

いざ相続が始まったとき、「何から手をつければいいのかわからない」「手続きが複雑で面倒だ」と感じる方は非常に多いです。
その面倒さの最大の原因とは、専門的な知識よりも、実は初めの段階にある「書類集め」、特に「戸籍謄本の収集」にあります。
遺産分割協議を始めるにしても銀行口座を解約するにしても、まずは『誰が相続人なのか』そして『どんな財産があるか』を確定させる作業が、相続手続きの最初の関門となるのです。
相続人を確定させるための最初のミッション
相続人を法的に確定させるために私たち行政書士がまず行うのは、亡くなった方(被相続人)の『出生から死亡までの連続した戸籍謄本』をすべて集めることです。
少し具体的に見ていきましょう。
戸籍謄本を「連続」して集める必要があるのは、戸籍の記録こそが、その方の人生における家族関係の変遷、つまり「一生の履歴」を公的に証明する唯一の書類だからです。
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結婚・離婚
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養子縁組や離縁
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認知
これらすべての家族関係の変動は戸籍に記録されています。
部分的な戸籍謄本だけでは、相続人となる可能性のある人(例えば、前妻との間の子どもなど)が漏れてしまうリスクがあるため、欠落なく一続きで集める必要があるのです。
【問題の核心】本籍地は自由に何度でも変更できる
戸籍収集を複雑かつ面倒にしている最大の要因が、「本籍地」です。
本籍地は住所と違い、土地の地番さえあればどこにでも自由に置くことができ、何度でも変更が可能です。特に、引っ越しや婚姻のたびに本籍地を移動させている方は少なくありません。
例えば、
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埼玉県で出生
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就職で神奈川県に引っ越し、本籍地を変更
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婚姻で東京都に本籍地を変更
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終の棲家として再び埼玉県に引っ越し、本籍地を変更
このような場合、以前は、残されたご家族(相続人)は、4つの異なる都県にある役所に対し、それぞれ郵送で請求手続きをし、何度も手数料や郵便代を支払い、長い期間をかけて戸籍を収集する必要がありました。これこそが、相続が「複雑。面倒だ」と感じる大きな理由の一つです。
運転免許証からも消えた「本籍地」の情報
さらに問題を難しくしているのが、現代では本人が自身の本籍地を把握していないケースが多いことです。
かつては運転免許証にも本籍地の記載がありましたが、個人情報保護の観点から現在では省略されています。そのため、本籍地の変更を繰り返した方は、「最後にどこで本籍地を置いたか」すら曖朧になっている場合があります。
本人が分からなければ、家族(相続人)は過去の戸籍の履歴を追う大きなヒントを失い、結果的に戸籍謄本収集の段階で大きな労力が生じることになります。
【朗報】2024年3月からの制度改正の活用
複雑だった戸籍収集手続きに関して、2024年3月からは制度が大きく変わり、非常に便利になりました。
以前は、本籍地のある役所にしか請求できませんでしたが、現在はお近くの市区町村役場の窓口で、全国各地にある戸籍をまとめて請求できるようになりました。(戸籍証明書等の広域交付制度)
例えば、上記のように埼玉・神奈川・東京と本籍地を移動していた場合でも、現在お住まいの市区町村役場だけで、すべての戸籍謄本を一度に取得できるようになったのです。
この制度のおかげで、以前のように複数の役所に個別に郵送請求する手間と時間は大幅に短縮されました。
残されたご家族のために今できること

制度が便利になったとはいえ、役所での確認作業や、戸籍の数が多い場合の煩雑さに変わりはありません。
あなたご自身の本籍地が変わったことのある方は、ぜひ以下の対策を今すぐ行ってください。
【残されたご家族へのヒントを残すために】
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過去の戸籍の履歴について、本籍地と移動したおおよその時期をメモ帳などに記録しておくこと。
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過去の本籍地が記載されている古い運転免許証や書類などを、すぐに確認できる場所に保管しておくこと。
これだけでも、残されたご家族にとって戸籍をたどる大きなヒントとなり、相続手続きの最初の壁を乗り越えるための大きな助けになります。
相続手続きは、その後の遺産分割協議や名義変更など、すべてが戸籍収集から始まります。ご不安な点、複雑な点がある場合は、相続手続きの専門家であるいちかわ行政書士事務所へご相談ください。戸籍収集から各種手続きまで、ご家族の負担を最小限に抑えるようサポートいたします。
