12遺言作成前に口座整理をしませんか?残された家族を苦労させないための『貯金箱』の片付け

遺言作成前に口座整理をしませんか?
残された家族を苦労させないための『貯金箱』の片付け

遺言書作成前に口座整理を勧めるブログ記事における、キャッシュカードのイメージ図

「遺言書を作成して、財産の分け方は決めたからこれで安心だ」とお考えではないでしょうか?

確かに、遺言書は相続争いを防ぐための最も強力な手段です。しかし、遺言書があっても、「口座の数」が多すぎると、残されたご家族は想像以上の時間と労力を費やすことになります。

特に銀行口座の整理は、遺言書作成と並行して行うべき重要な生前対策です。この記事では、なぜ多くの口座を残すことが相続人の負担になるのか、そして、今すぐできる口座整理の具体的な方法を行政書士が解説します。

相続人調査の次に来る「金融機関との煩雑なやり取り」

相続手続きは、まず「相続人調査(戸籍収集)」から始まりますが、相続人が確定した後に直面するのが「金融機関とのやり取り」です。

ご家族が相続手続きで苦労する点として、「故人がどこの銀行に、いくらの残高があるのか分からない」という問題が挙げられます。

預貯金が多ければ多いほど残された家族は喜ぶと思われがちですが、実際には「使っていない休眠口座」が大量にあると、手続きの負担が倍増するのです。

【ケーススタディ】なぜ使わない口座が残るのか?

多くの方が、以下のような理由で口座を開設したままにしています。

給与やアルバイトの振込指定
 転職や退職後、その口座は使われなくなる。

・特定の引き落とし指定 
 保険料、奨学金、クレジットカードなど、特定の用途のために開設し、目的終了後も放置。

・「いつか使うかも」という心理
 残高が数百円〜数千円と少額でも、「念のため」という気持ちで解約しない。

こうした「少額残高で放置された口座」こそが、相続手続きにおける隠れた時限爆弾となります。

残高に関係なく、すべての口座に「相続手続き」が必要

口座整理が重要である最大の理由は、残高の多寡に関わらず、すべての口座に相続手続きが必要になるからです。

相続が開始すると、以下の書類と手順が口座の数だけ必要になります。
(各金融機関により異なります)

  1. 必要書類の提出
    遺言書または遺産分割協議書、相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書など。

  2. 来店または郵送
    各金融機関、各支店ごとに手続きを行う必要がある。

  3. 時間と手間
    一つの金融機関との手続きだけでも数週間〜数ヶ月かかることがあり、口座が多ければその分、時間も手間も膨大になる。

相続人にとっては、数百円のために戸籍や印鑑証明書を揃えて銀行に何度も足を運び、煩雑な書類を記入するのは非常に大きなストレスとなります。

遺言作成と同時に行うべき「口座の棚卸しと一本化」

遺言書を作成する前に、または作成した後でも遅くはありません。今すぐ「口座の棚卸し」を行いましょう。
この整理によって、ご自身も、残されたご家族も安心できます。

ステップ1:全口座の残高と目的の確認

すべての銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行などの通帳やキャッシュカードを探し出し、残高とその口座を開設した目的(給与用、旅行積立用など)をメモします。

ステップ2:不要口座の「断捨離」

  • 現在全く使っていない口座

  • 残高が少額で、復活させる予定のない口座

これらは迷わず解約しましょう。解約するだけで、将来的な相続手続きの負担が一つ減ります。
この作業は、「残された家族への思いやり」の現れです。

ステップ3:メイン口座を明確にし、流れを一本化する

解約後、残った口座の中から、「メインバンク」を一つまたは二つに絞りましょう。

・入金の一本化
 給与、年金、配当金など、すべての入金をメイン口座に集約します。

・出金の一本化 
 公共料金(電気、ガス、水道)、クレジットカード、保険料などのすべての引き落としをメイン口座にまとめます。

これにより遺言書に記載すべき財産も明確になり、ご自身の日常的なお金の流れも把握しやすくなります。

まとめ:遺言書は「何を遺すか」を明確にするツール

いちかわ行政書士事務所 代表行政書士 市川俊介

遺言書は、「何を誰に遺すか」を決める素晴らしいツールです。しかし、その「何を」の中に、「解約されていない少額口座が多数」含まれていては、せっかくの遺言の効力も半減してしまいます。

口座整理は「資産の所在地を明確にすること」であり、遺言書作成とセットで取り組むべき生前対策です。

いちかわ行政書士事務所では、遺言書作成のご相談はもちろん、財産の棚卸しや整理に関するアドバイスも行っております。残されたご家族に「安心」を遺すために、まずは口座の整理から始めてみませんか。

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