06【現代に通用しない?】「家督相続」の誤解と、長男が家を継ぐための正しい遺言書作成術
【現代に通用しない?】『家督相続』長男が家を継ぐための正しい遺言書作成術
「家督相続」は昭和22年に廃止

『長男だから、実家と家業の財産すべてを継ぐべきだ』
このような『家長制度』に基づく考えは、特に地方や代々続く家柄では深く根付いています。しかし、この『家督相続』という制度は戦後の民法改正により、すでに昭和22年(1947年)に廃止されています。
現代の法律において『長男にすべての財産を継がせる』という意思を実現するためには、正しい形式の遺言書が必須です。
遺言書がない場合『家督』という意識だけが残り、結果的に他の兄弟姉妹の『法定相続分』の権利を侵害し、家族間の深刻な『争族』に発展するリスクが高まります。
この記事では、家督相続が廃止された理由とその結果生じた現代の相続トラブルを解説し、『長男に家を継がせたい』というあなたの大切な想いを法的に有効かつ円満に実現する遺言書の作成術を、実務家の視点からお伝えします。
【基礎知識】家督相続はなぜ廃止され、法定相続分が導入されたのか?
廃止された理由:民主主義と個人の尊重
かつての明治時代の民法(旧民法)では、家の財産はすべて「家」に帰属し、原則として戸主(家長、主に長男)が単独で家督を継ぎました。これが家督相続です。
しかし、第二次世界大戦後の日本の民主主義化と『個人の尊厳と両性の平等』を定める日本国憲法の施行に伴い、この家督相続制度は昭和22年に廃止されました。
家制度のもとで抑圧されがちだった女性や、戸主ではない家族の人権と財産権を保障することが廃止の最大の理由です。
導入された「法定相続分」という平等なルール
家督相続の廃止に伴い、現在の民法では戸主ではなく『亡くなった人(被相続人)』の財産を、配偶者や子全員が平等に相続するというルールが導入されました。これが法定相続分です。
例えば、法定相続人が配偶者と子2人であれば配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつを承継する権利を持ちます。このルールは、遺言書がない場合、すべての相続手続きのベースになります。
廃止された『家督の考え』が招く現代の深刻なトラブル事例
家督相続の考えが残っている家庭ほど『遺言書は不要、長男が継ぐもの』という誤解から、相続発生後に思わぬトラブルに直面します。
トラブル事例①自宅が『共有名義』になり、売却もリフォームもできない
遺言書がなく、長男が『自宅は自分のもの』と思い込んでいても、妹や弟も法的に自宅の所有権を持っています。
・問題点
自宅の土地・建物が相続人全員の**「共有名義」**になってしまいます。
・実務上の影響
共有名義の自宅を売却したり、リフォームのために担保に入れたりする際、共有者全員(つまり兄弟姉妹全員)の実印と同意が必須になります。将来、関係が悪化すると長男は自宅を自由に管理・処分できなくなります。
トラブル事例②現金を持たない長男が『代償金』を請求される
長男が自宅を単独で取得する場合でも、他の兄弟姉妹は自分の法定相続分を主張できます。
・問題点
長男は、自宅の価値から算定される他の兄弟姉妹の相続分に見合う『代償金』を現金で支払うよう請求される可能性があります。
・実務上の影響
自宅や事業用不動産が資産の大部分を占め、預貯金が少ない場合、長男は代償金を支払うために自宅を売却するか多額の借金を負うという事態に陥りかねません。
『長男に継がせる』を円満に実現する遺言書作成の鉄則

長男への確実な財産承継を実現するには、法定相続分と遺留分を尊重しつつ、明確な意思を示す公正証書遺言を作成することが最善策です。
鉄則①『代償分割』を指示し、遺留分侵害を防ぐ
長男に不動産を集中させる場合、他の兄弟姉妹の遺留分(最低限保証された相続分)を侵害しないよう、配慮が必要です。
遺言書に『代償分割』の指示を明記することで遺留分を侵害するリスクを避け、家族間の公平性を保てます。
・記載例
『長男は不動産を相続する代償として、長女に対し金銭〇〇万円を支払うものとする』
・効果
長男は家を継ぎ、他の相続人は金銭的な補償を得られるため、家族全員が納得しやすい形で相続を完了できます。
鉄則②:遺言執行者を指定し、手続きの停滞を防ぐ
遺言書を作成しても、その後の預金解約や名義変更の手続きを誰が行うか(遺言執行者)が明確でないと、手続きが停滞します。
遺言執行者を指定することで、長男が単独で手続きを進めることができ、他の兄弟姉妹の協力は不要になります。
公正証書遺言で『長男相続』を確実なものに
長男に財産を継がせるという想いを机上の空論で終わらせないためには、遺言書が『法務局や金融機関で確実に受理・実行できる』内容であることが極めて重要です。
いちかわ行政書士事務所は長年の金融機関での実務経験を活かし、財産の特定漏れや手続き上の不備を徹底的に排除した公正証書遺言の作成をサポートします。
流山、柏、松戸周辺で、次世代への確実な財産承継とご家族の平和を願う方は、ぜひ一度初回無料相談をご利用ください。

